耕作放棄地の広がりとそこに繁茂する雑草とは、農山村の衰退を象徴するかのごとくです。しかも外来の帰化雑草(セイタカアワダチソウ、オオブタクサ、ヒメジョオンなど)の旺盛な繁殖ぶりには圧倒されます。
耕作放棄地は風景づくりの主要な対象であり、その基本は雑草対策です。
雑草の草丈を低く抑え、 “緑の薄衣(うすぎぬ)” をまとったような柔らかでぬくもりのある農地の風景を浮かび上がらせることが目標です。
特に生長・繁殖著しい帰化雑草の減退をめざし、一方、観賞性のある在郷野草(在郷の在来野草)は生かします。
管理の手不足から、省力化につながる方法を模索しながらの取り組みです。その一環として、集落や道路などから離れた場所での草原化などを試行しています。
耕作放棄地における最も好ましい風景づくりは農作物の栽培です。私が取り組む風景づくり(雑草対策)は、植生遷移が進み大型雑草に加え木本類やタケ類が侵入しつつある状況において、更なる遷移の進行をくい止め、農作物栽培の再開を導きやすくするための維持管理作業になります。
【耕作放棄畑における植物群落の遷移の例-関東地方】
放棄当年:畑地雑草のメヒシバ(一年生)などが繁茂
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翌年:路傍雑草のヒメムカシヨモギ、ヒメジョオン、オオアレチノギク(以上一・二年生)などが優占
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4-5年後:ススキ、チガヤ、トダシバ(以上多年生)などのイネ科草原となる
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その後:マント群落(林縁の低木・ツル植物群落)のキブシ、ヌルデ、クズなどが被う
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さらに:クヌギ-コナラ林(落葉広葉樹林)
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80-100年後:内陸ではカシ類の常緑広葉樹林が発達
「宮脇昭、植物と人間、日本放送出版協会」から抜粋、( )加筆