下り斜面 → 低平地 → 上り斜面へと変化する地形は、コンケイブ地形といってダイナミックな風景を展開します。ここは低平地に盛土して幹線道路が築かれており、幹線道路上からの眺望風景はコンケイブ地形に近似のものとなっています。
ダイナミックな地形との共演
15年程前、一帯の農地は既に耕作放棄されており、ダイナミックな風景も鳴りを潜めていました。そこで彩りあるものをとの思いから1本のシダレザクラを植えました。農地が日陰とならないように小川沿いの一角です。
今では生長して樹冠も膨らみ、一本桜ながら、花の枝垂れとコンケイブ地形のダイナミズムとが春を共演しているかのようです。地域の皆さん、道行く人たちの目も引き付けつつあります。
幹線道路上から見た対象地。コンケイブ地形(下り斜面→低平地→ 上り斜面へと変化する地形)に近いダイナミックな風景が展望され ます。農地の草の芽吹き、里山の新緑、一本のシダレザクラが春を 共演しているかのようです。
勤労と豊穣のモニュメント
周辺の田畑で農作業に勤しむ母の姿は今でも目に焼き付いています。私にとってこのシダレザクラは腰を折って田植えや稲刈りをした母の姿であり、たわわに実った母の人生を映す木です。
草刈り作業の合間、この枝垂れの下で休憩していると近隣の人からうらやましがられます。風流とでも感じていただいたでしょうか。休憩時の場面ではありますが、草刈り作業という労働に風情が宿ったかのような光景であったのかもしれません。
雑草地の一角に花木の一本でも植えれば、その成長ぶりや花が楽しみとなり、草刈り作業にも精が出ます。また近年の猛暑では日除けとなる木陰の存在は貴重です。労働に癒しややり甲斐を添え、はた目にも労働が趣向を帯び、新鮮な風を巻き起こす・・・そこが農山村の風景づくりの神髄です。
[植付け・剪定]
▶ 植付け:約15年前、3月に実施。
▶ 剪定:12・2月に実施。 ▶ 植樹後これまで手入れをしておらず、まずは樹形を乱すやや太い枝の剪定を行い、以後は込み入った枝・枯れ枝等の軽い剪定を行っています。 ▶ 枝垂れものの基本として上方・外側に伸びる枝を生かし、下方に伸びる枝を切除しています。 ▶ サクラは切り口から腐朽しやすいとのことから、剪定した切り口には保護剤(癒合剤)を塗っています。 ▶ かつて水田であり基盤の軟弱性や台風の強力化を危惧し、支柱を添えました。