① チガヤ草原
チガヤは史前帰化植物とされ、若い穂は噛むと甘みがあり、かつては子供たちがよく口にしたそうで、また厄除けの “茅の輪(ちのわ)くぐり” という風習を生むなど、人々の生活と結びつきの深い草です。
草丈は80㎝程度以下で生長・群生しても鬱陶しさはなく、一面の白穂が風になびく様は風景になります。
一方、地中にしっかりと根を張って繁殖域を広げるため、畑の雑草としてはやっかいな存在とされます。
山に隣接した棚田上段にチガヤの生育が見られます。ここは植生の遷移が進み、低木やタケ類も侵入してきており、したがって耕作の再開は厳しくなりつつあります。
先ずは低木やタケ類の駆除を行い、チガヤは在郷の風景素材として生かし “チガヤ草原” をめざすことにしました。
ポイントは年2~3回の刈り取り
チガヤ草原を出現・維持するためには刈り取りの頻度が重要であり、関東地方では年2~3回程度が適切であり、それ以下でもそれ以上でも他の草種に優占状態を奪われてしまうのだそうです。
[着手前の状況]
ヨモギ、ヒメジョオン、カヤツリグサ類、メヒシバ、セイタカアワダチソウ、イノコヅチ類等の雑草が繁茂し、半低木ツル性のコボタンヅルが陣地を広げ、さらに山の方からタケ類が侵入してきている状況でした。その一角にチガヤが疎らの状態で生育しています。
[管理・生育状況]
▶ まずタケ類の除去を、地下茎の掘り起こしや吸収移行性除草剤の散布により行いました。 ▶ コボタンヅルも吸収移行性除草剤を散布して駆除しています。 ▶ チガヤおよび混生する他の雑草の状況も見ながら年3回程の刈り取りを行っています。 ▶ チガヤは徐々に密度を増し、範囲を広げつつあります。 ▶ 種子繁殖は難しく、一度試してみましたがほとんど成果はありませんでした。
年3回程の刈り取りにより密度を増しつつあるチガヤ。
② ススキ草原
ススキは大きいものでは草丈2m程にもなりますが、在来種であり、秋の七草の一つ、秋の季語であるなど、秋を象徴する存在です。
かつては里の周辺に草原(茅場 かやば)として保持され、屋根葺き材や家畜飼料等として定期的な刈り取り、利用がなされていたということです。
自然のなりゆきではススキは草地における最後の優占種であり、そこには低木さらには高木が徐々に侵入し、森林へと至るのだそうです。ススキ草原を維持するためには年 1 回程度の刈り取りが必要とのことです。
実践には至っていませんが、これまでに得た情報(関東以外を含む)からすると、ススキ草原の維持をめざした刈り取りの適期は5月下旬~6月頃です。刈り取り・処理労力が少なくてすみ、また当年の草丈を抑制できる可能性もありそうです。
夏季の刈り取りはススキを減退させる恐れがありそうです。
秋季の刈り取りもススキ草原の維持さらなる繁茂につながるようですが、刈り取り・処理労力は多大です。
不定期ながらほぼ年 1 回の刈り取りが行われている耕作放棄地。
帰化雑草が混生するもススキ草原が形成されつつあります。
草原による管理の省力化
耕作放棄地が鬱陶しくならないよう維持するためには年4~5回の草刈りを要することからすれば、チガヤ・ススキの草原として維持していくための刈り取り頻度はそれぞれ年2~3回程度・年 1 回程度と少なく、管理の省力化につながる可能性があります。
ただし、他の雑草も混生することから、集落や歩行者の多い道路からチガヤ草原は多少離れたところ、ススキ草原はさらに離れたところでの選定が好ましいと言えるでしょう。
また、風景保全および草原の健全な育成のためには刈り取った草の搬出が好ましく、その処分・利用方法も事前に決めておきたいところです。