ヘアリーベッチについて
「(5)地被への応用 ヘアリーベッチ -雑草対策と彩り創出」において記しましたように、道路盛土法面にヘアリーベッチ(ビロードクサフジ)を試行的に導入しました。
ヘアリーベッチは緑肥や雑草対策用等として農業において利用されている植物ですが、生態系被害防止外来種であり、同じ水系内で既に逸出して繁茂している河川も見られ、積極的には導入しがたい素材です。ただし、耕作放棄地の草刈りに時間を取られている状況であり、また道路盛土法面に導入したヘアリーベッチの花に好感の声があがったことから、耕作放棄地にも導入してみることにしました。
[着手前の状況]
【耕作放棄地1】前年まで一角で野菜栽培が行われていた所で、ヨモギ、ギシギシ、スイバ、ヒメジョオン、セイタカアワダチソウ、コセンダングサ、ススキ、アレチヌスビトハギ等の雑草が繁茂していました。
【耕作放棄地2】前年まで一角で野菜栽培が行われていた所で、ヨモギ、ギシギシ、スイバ、ヒメジョオン、メヒシバ等の雑草が繁茂していました。
[ 施 工 ]
▶ ヘアリーベッチ晩生品種の種を購入し、10~11月に播種しました。 ▶ 三角ホーを使って除草しつつ溝を切り(間隔40~50cm程度)、筋蒔きしました(覆土2~3cm)。播種量の目安は4kg/10aです。 ▶ 最初の播種は降雨を待ってその直後に行いましたが、その後は3ケ月以上にわたり降雨ほぼ 0 で、乾燥状態での播種となりました。
[生育状況・管理]
▶ 播種時の天候が発芽状況に顕著に現れ、初期のものは良好、それ以後のものはまばら状態でした。 ▶ 春になり気温が上昇するにつれ成長著しく、発芽不良のところも徐々に色濃くなり、初夏の頃にはいずれも繁茂状態となり、開花しました。 ▶ 5月頃からスイバ、6月頃からヒメジョオンやギシギシ類が伸び出て花を付けることから、種子繁殖抑制のために「片手用刈込みバサミ」(*)による茎切除、草払機による高刈りを行いました。 ▶ 梅雨が明け盛夏到来とともにヘアリーベッチは枯死します。 ▶ 代ってギシギシ類、ススキ、アレチヌスビトハギ等の多年生雑草が目に付き成長してきました。これらに対し「吸収移行性除草剤」(*)を散布しました。 ▶ 9月に入りヘアリーベッチの落下した種子からの発芽が始まり、現在2サイクル目に入っています。
*片手用刈込みバサミ・吸収移行性除草剤⇒(6)雑草対策用 道具・除草剤
写真上:耕作放棄地1、写真下:耕作放棄地2。
― 現時点における ―
ヘアリーベッチの地被としての期待度
1サイクルのみを見ての考察ですが、雑草抑制効果は期間限定であり、生態系被害防止外来種であること、土壌を富栄養化することも加味すると、耕作放棄地においては導入しがたい素材です。
●雑草抑制効果は繁茂する春から梅雨までの時期に限定されます。
●ヘアリーベッチは優良な緑肥ですが、それがアダとなって弊害が出ないか、窒素過多により雑草の発生・生長を助長することにならないか危惧されます。
●夏季の枯死後に雑草抑制効果あるいは観賞性のあるペア植物を見出すことができれば、窒素過多分の吸収にもつながり、ヘアリーベッチも選択肢の一つになると思われます。最も好ましいペア植物は農作物です。