Skip to content

(1)耕作放棄地の雑草対策 -雑草の減退をめざした草刈り

1)目標

耕作放棄地における草刈りは、雑草の種子繁殖の阻止、多年生雑草の弱体化をねらった草刈り方法により、雑草の減退を図り、草丈が低く、鬱陶しさのない草地の形成をめざします。

また刈り取った雑草の搬出等により、日本の土本来の酸性・貧栄養を取り戻し、在来野草の被覆度を高め、外来の帰化雑草の新たな侵入を抑制します。

2)草刈り方法

① 雑草の開花・出穂時刈り取り

第一に “雑草の開花・出穂をタイミングのサインとみて ひたすら刈り取る” ことを努力目標にしています。

開花・出穂をタイミングとする刈り取りは、種子散布による繁殖を阻止するとともに、地中の根茎(⇓)などが養分を貯蔵し繁殖機能を有するもの(多年生雑草⇓)は、開花・出穂までに光合成により葉に貯蔵していた養分が根茎などに運ばれ貯蔵されるのを阻止し、さらに再生のために根茎などに貯蔵していた養分を消費させることにより、弱体化を図るものです。

厳密には結実までに刈り取ればよいわけですが、結実は見た目に分かりにくいこと、またイネ科雑草などは花自体も分かり難いことから、確実性と余裕とをもって開花・出穂時にしています。

【根茎】

こんけい:地中の茎で、丈夫な根のように見える。

【一・二年生雑草】

繁殖は主に種子による。

生活環(種子の発芽→生長→開花・結実・散布→枯死)が1年・1年以上2年以内

ヤハズエンドウ、カヤツリグサ、メヒシバ、ヒメジョオンなど

【多年生雑草】

繁殖は種子と根茎などからの萌芽の両方によるものが多い。

地中の根茎などから毎年萌芽し、地上の茎・葉等を生長させ、開花・結実し、 個体として何年も生き続ける。根茎は光合成により作られた養分の貯蔵所でもあり、貯蔵された養分は地上部の生長に使われる。根茎は細断されても萌芽・再生する。

スギナ、ヨモギ、ハルジオン、ギシギシ、セイタカアワダチソウ、ススキなど

ギシギシは黄色く太い主根が根茎と同じような働きをします。

  

② 草払機による高刈り

第二に地面の攪乱を極力抑えるよう、肩掛式草払機による “高刈り” を採用しています。

地面を攪乱すると、土壌中の種子に発芽のチャンスを与え、また多年生雑草の根茎などを切断して拡散させてしまうことになりかねません。地面の攪乱を抑える高刈りは、このような雑草への助長を回避しようとするものです。

高刈りを続け、草類による被覆が形成されれば、攪乱に対し強みを発揮する帰化雑草の更なる侵入を防ぐことにつながることが期待されます。

「雑草は、在来種が共存・競争のもとに動的均衡を保っているところへ外来の帰化植物はなかなか侵入できないが、人工的な土地の改変等により攪乱された地面が出現すると、帰化植物はここぞとばかりに入り込み、旺盛な生長力・繁殖力をもったものが急速に自分たちの世界を築く」のだそうです。

高刈りでは雑草がすぐに生長してくることから、刈り取り作業の頻度を高めることになりますが、一回の作業は軽易で短時間で済みます。時には抜きん出た特定の草種のみに限っての作業になります。

例えれば、年1~3回の草刈りは毎回が大掃除、それに対しこの草刈り方法は習慣的な中~小掃除です。

  

  

-効率化・省力化のための道具-

草払機・チップソー

高刈りでは地面から離れ不安定な状態の茎・葉を刈ることから、草払機のチップソー(円盤型刈刃)は切れ味のよいものが求められます。単に高価なもの、摩耗や衝撃に対し強靭なもの、雑木用などがよいとは限らないようです。数種類の製品を試行し、今は[外径255mm、刃数40、先端研磨仕上げ]のものを使用しています。草払機は外径255mm対応のものが必要です。

片手用刈込みバサミ

高く伸び上がって開花した特定の草種のみ、あるいは歩行者の多い道路沿いなどの特定の範囲のみ、などの少量の刈り取りには “片手用刈込みバサミ” を使った切除を行っています。片手用刈込みバサミは剪定バサミを長尺にしたような形のもので、低い位置での切除作業でも足腰への負担が少なく、少量の除草作業における省力化に貢献してくれています。

  

3)刈り取った雑草の搬出

刈り取った雑草はそのまま放置せず、かき集めて搬出しています。

刈り取った雑草をそのまま放置すると、●刈り取った雑草の栄養分が土に戻り雑草の生長を育むことになる、●相当量含まれると思われる未熟の種子が熟して落下・発芽する可能性がある、●高刈りにより生かした小型・匍匐型の在郷野草(後述)の生長に支障を来たす恐れがある、●病害虫が発生する、などが危惧されます。

耕作放棄地における草刈りは、刈り取った雑草の搬出までをもって完了です。  

搬出した刈り草は、植木の肥料などとして利用するようにしています。

  

4)在郷野草を生かす

① 小型・匍匐型の在郷野草を生かす

草刈りに際し特に注視しているのは、観賞性あるいは雑草抑制機能のある小型・匍匐型(ほふく、地表付近をはうこと)の在郷野草(在郷の在来野草)の存在です。

● 帰化雑草が目立つ耕作放棄地にも、比較的開放的な場所には、観賞性のある花や葉を持つ在郷野草が生育している場合があります。留意して保全し、一部は里地内道路沿いに移植しています。

● 雑草抑制機能の見られる在郷野草は、里地内道路沿いに移植し、その機能の程度・活用の可能性を探っています。

高刈りはこうした有用性のある在郷野草を見い出し、保全・活用を図ることを可能にしてくれます。

  

② 在郷野草に有利な本来の土に戻す

作物栽培のために改良をめざして手を加えられてきた田畑の土は、元々の “酸性・貧栄養” から “弱酸性~中性・富栄養” へと変質しているそうです。この状況は、本来の土に生きてきた在来野草にとっては不利、一方、日本ほど酸性化・貧栄養化にない土に育った外来雑草にとっては有利であると言えるでしょう。

雑草の “開花・出穂時刈り取り ~ 刈り取った雑草の処分” は、土の栄養分を消費・削減することにつながり、帰化雑草を減退させ、在郷野草を生かすうえでの土づくりになると考えられます。

日本の土は本来は概して “酸性・貧栄養” だそうです。それは降雨が大気中に含まれる二酸化炭素を吸収して酸性であり、日本ではその降雨が多いことが元々の要因のようです。また日本には火山が多く、火山噴出物の風化特性なども起因しているようです。

農作物の多くは微酸性ないし中性の土を好みます。酸性では土が貧栄養になりやすく、また根にとって有害なのだそうです。

日本の農家は作物を立派に育て収穫量を上げるために、石灰を撒いては酸性度を矯正し、また励んで肥料を投入してきました。

そのため田畑の土は元々の “酸性・貧栄養” から “弱酸性~中性・富栄養” へと変質しているそうです。

本来の土に生きてきた在来野草にとっては不適、一方、日本より雨も火山も少なく、日本ほど酸性化・貧栄養化にない土に育った外来雑草にとっては適性な土壌環境にあると推測されます。

  

5)対応の現状

しかし相手は雑草、現実はそうたやすいものではありません。雑草は様々な種がそれぞれの特徴を呈して生長しては開花します。また土壌中の種子の寿命は数十年に及ぶものもあるとのこと。

先ずは生態系被害防止外来種のヒメジョオンやセイタカアワダチソウ、高く伸び上がって目立つハルジオン(外来種)やギシギシなどに的を絞っています。

作業は概して後追いの状況ですが、そのなかで変化を見せ始めたものがあります。

セイタカアワダチソウの小型化

セイタカアワダチソウはアレロパシー物質(*)を放出し、土の性状なども関係しているでしょう、耕作放棄地の一角で優占的な存在になっています。高さ2m以上に生長して群落を形成し、見るからに鬱陶しい帰化雑草の代表です。多年生であり、抜き取っても根茎が残っていればまた再生してきます。

*アレロパシー(他感作用):一つに植物が放出する化学物質が他の植物の育成を阻害する作用。

セイタカアワダチソウは一定の時期に一斉に黄花を穂状に付けることから、刈り取りのタイミングを計りやすい雑草です。一度開花時の刈り取りを行うと、生長して当季に再度花を付けますが、小型状態での開花となります。不足ぎみであるはずの栄養状態がどれ程影響しているかは分かりませんが、鬱陶しさはかなり緩和されています。この段階で再度刈り取りを行います。

開花時刈り取りによる雑草の減退
  一度開花時刈り取りを行った後に生長して再度花を付けたセイタカ
  アワダチソウ。隣接畑のススキと対比しても草丈はかなり低く、鬱
  陶しさはそれほどありません。
  セイタカアワダチソウの小型化は“緑の薄衣”の創出に向けた初期
  のステップとなりそうです。

  

6)優先順位を付けて負担軽減

風景づくりにおいては目に付きやすいところから優先的に取り組むことにより、省力的に成果を導くことができます。

私が取り組んでいる耕作放棄地の規模は、私一人の労力ではカバーしきれないことから、以下のような考えをもって臨んでいます。

● 歩行者の多い道路の近辺を優先して取り組む。

● 集落や道路から離れた場所あるいは近くても見え難い場所で、チガヤやススキなどの草地生の在来野草が見られる場合は、それらを生かした草原をめざす。チガヤやススキを草原として維持していくための刈り取り頻度はチガヤ年2~3回程度、ススキ年1回程度であり、省力化の可能性があります。

  

7)除草剤の使用

除草剤の使用は極力控えたいところですが、除草剤は手ごわい多年生雑草等の駆除に極めて有効であり、これらに的を絞って限定的に使用しています。

  

Widgets

Scroll to top