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(5)地被への応用 ヘアリーベッチ -雑草対策と彩り創出

盛土法面の演出

元々の地形に盛土して造成される盛土法面(もりどのりめん、法面=人工の斜面)は、道路面から下る斜面をなし、道路上からは見え難い部分です。しかし高茎の雑草は路面レベルを越えて伸び上がり、またツル性のクズは難なく路面まで這い上がってくることから、雑草の鬱陶しさに変わりはありません。

雑草抑制効果があり、しかも花が路上から観賞できるようにある程度高くなる植物を求め、ヘアリーベッチの導入を試みました。

ヘアリーベッチ(ビロードクサフジ)とは

ヘアリーベッチは外国原産のマメ科植物で、ヤハズエンドウ(カラスノエンドウ)を大型化したイメージで、ツル性の茎がうねりながら高さ50cm前後まで立ち上がります。花は鮮やかな紫色で、その付きようがフジに似ています(ただし垂れ下がらずに上向き)(花期4~6月頃)。

窒素固定に優れ、すき込みによる地力向上効果が大きいことから緑肥として、また強いアレロパシー(*)を有するとして雑草対策などとして農業での利用が見られます。

生態系被害防止外来種であり「利用上の留意事項:河川に侵入して種子が拡散される場所へは持ち込まない」に対応する必要があります。

*アレロパシー(他感作用):一つに植物が放出する化学物質が他の植物の育成を阻害する作用。

長期的な雑草抑制効果が特徴の晩生品種を導入

耕作放棄地への導入可能性を探る意味も含め、小規模の道路盛土法面への試行的導入です。複数ある品種のなかから長期的な雑草抑制効果が特徴の晩生品種を選定しました。この地域では秋蒔きが標準的で、越年して春に生長して花を咲かせ、夏に枯死します。そのため、枯死する夏以降の雑草対策が課題となります。

 

[着手前の状況]

ヨモギ、スギナ、メヒシバ、スイバ、ヒメジョオン等の雑草が繁茂し、クズが覆う状況でした。

[事前作業]

▶ クズは吸収移行性除草剤を散布し駆除しました。

[ 施 工 ]

▶ 晩生品種の種を購入し10月に播種しました。 ▶ 抜き取り除草を行い、園芸用スコップで溝を切り(間隔30㎝程度)、筋蒔きしました(覆土2~3cm)。播種量の目安は4kg/10aです。 

[ 生育状況・管理 ]

▶ ほぼ1カ月後の11月に発芽を確認しました。 ▶ 越年し、春を迎え気温が上昇するにつれ生長著しく、5月頃に繁茂状態となり、同時に花も満開になりました。   ▶ ヘアリーベッチはツル性の茎がうねりながら高さ50cm前後まで立ち上がることから、小型の雑草は発生しても見え難く気になりません。その分は除草の省力化につながります。 ▶ しかしヒメジョオンなどは上方に伸び上がってきますので、抜き取りや茎切除を行っています。 ▶ 花後はサヤを作って結実し、梅雨明け頃に枯死します。 ▶ 8月にキツネノマゴが発生・群生してきました。キツネノマゴは小型の在郷野草で、花はかわいい赤紫色(花期8~10月)ですが、穂はやや野性的です。路面から下る盛土法面の植生としては遜色ありません。ヘアリーベッチのオフシーズンをカバーする植生として生かしています。  ▶ 落下した種子は9月頃に発芽し、繁殖を繰り返し、現在3サイクル目に入っています。

  

  6月、道路盛土法面を彩るヘアリーベッチ。ここは南向き斜面、陽
  光を受け紫色の花が一段と鮮やかです。
    川近くにまではびこってきたので、川へ逸出しないように危うい株
  は花後に除去しました。

  

  写真上と反対側の法面。8月、ヘアリーベッチの枯死後に発生・群
  生したキツネノマゴ。ヘアリーベッチのオフシーズンをカバーする
  在郷野草として生かしています。

 

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