切土法面= “田舎のショーウィンドウ” を華やかに演出
元々の地形を掘削して形成される切土法面(きりどのりめん、法面=人工の斜面)は、道路面より立ち上がり、道行く人にとって目に入りやすく、アピール性があります。
そこで里地内道路際の切土法面を “田舎のショーウィンドウ” と見立て、地被植物のなかでも特に花が華やかなポテンティラ・ベルナを選定しました。
ポテンティラ・ベルナとは
ポテンティラとはキジムシロ属のこと。ベルナは外国原産の園芸用地被材で、同属のヘビイチゴに似た黄色の花を一面星状に咲かせます。花期は4~7月。株に葉柄を叢生(そうせい、多数が束状に生えること)・密生し、匍匐茎(ほふくけい、地表付近を這って伸びるツル状の茎)を出して増殖・群生し、地面を覆います。
[着手前の状況]
切土法面は高さ1m程度以下で急勾配、雑草に覆われていました(ヨモギ、ヒメジョオン、メヒシバ類、カタバミ、コヒルガオ等)。隣接地は耕作放棄地で法面と同様の雑草が繁茂しています。
[ 施 工 ]
▶ 面の見えやすさと植栽基盤としての安定性のために、急勾配の切土法面を緩やかに均しました(勾配=縦横比1:1.5程度)。 ▶ 同時に根こそぎ除草を行いました。 ▶ 秋にポット苗を購入し、間隔30~40cmで植付けを行いました。
[ 生育状況・管理・施工へのフィードバック ]
▶ ベルナは密生状態を維持しつつ徐々に陣地を広げていきます。植付け箇所毎に形成している群落が相互に密着する前に、個々の群落を分割しては周囲に移植していきました。 ▶ 丸3年で植付け・移植した範囲(延長3メートル程)がほぼ隙間なく一つの群落となりました。 ▶ その間、群落内にもメヒシバやカタバミ等の雑草が盛んに発生し、その抜き取りには手を焼きました。事前に除草剤(吸収移行性除草剤等)により駆除すべきであったと考えています。雑草の根や種子の混入していない土(深部の土など)があり、客土できればより良策でしょう。 ▶ 長雨に弱く、葉が溶けたように腐敗しますが、陽光を浴びればすぐに新たな葉が出てきます。 ▶ 4年目、多少の雑草発生があったものの雑草抑制効果が発揮され、省力化の域に達しました。 ▶ さらに群落の周辺部を掘り出し、移植・増殖を図っています。
植え付け3年目、花には皆さんから好感の声が上がりました。“田舎 のショーウィンドウ”にふさわしい華やかさがあります。
植え付け4年目、植栽範囲が隙間なく密生状態となり、それまでの 除草の労を吹き飛ばすほどに雑草抑制効果を発揮してくれました。
― 現時点における ―
ポテンティラ・ベルナの地被としての期待度
●密生途上では雑草が盛んに発生し、その抜き取りには手を焼きましたが、植付け4年目に高い雑草抑制効果を発揮してくれました。多数の葉柄を叢生・密生し、根が絡み合い、マット状態を形成することが効果的に機能しているように思われます。今後もこの機能が継続するならば、これまでの抜き取り除草の労をカバーし、地被材として大いに期待されます。
●一面星状に咲き乱れる黄花が華やかで、花期も比較的長く(4~7月)、また花後の夏から秋にかけての深緑の葉も魅力的です。
●長雨により葉がダメージを受けやすいことから、排水・日照の良好な場所が好適地と思われます。
●外国原産であることから、特に華やかさを演出する範囲に限定しての利用が好ましいと考えます。