“田舎のショーウィンドウ”
里地内道路に沿って棚田の土手が面する区間があります。高いところで3メートル程ある大きなもので “田舎のショーウィンドウ” のメインとなる存在です。
多彩な植生法面を創出
道路側方緑地と連続してヒメイワダレソウを植栽し、これを先行的地被材とし、その後は在郷野草の侵入を選択的に許容し、それらが混生し、長期間にわたって色とりどりの花を楽しめ、ミツバチ等の昆虫も集まる、そうした多彩な植生法面の創出をめざしています。
[着手前の状況]
植生遷移が進行しススキ等の大型雑草、ササ・タケ類、木本類が侵入しつつある状況でした。
[ 施 工 ]
▶ 雑草、ササ・タケ類、木本類は全て掘り起こし根こそぎしました。 ▶ 除草を行いつつ、土手斜面を植栽基盤として安定的な勾配(縦横比1:1.5程度)に均しました。 ▶ ヒメイワダレソウの植付けは苗床からの移植で、詳細は道路側方緑地におけるヒメイワダレソウ植栽[区間1]にほぼ同じです。
ヒメイワダレソウ植栽⇒(1)地被 ヒメイワダレソウ -効果的・省力的維持管理をめざして
先行的地被としてのヒメイワダレソウ植栽。被覆の薄い箇所や周縁 から野草・雑草が発生・侵入してきます。 ここは南西向き斜面で厳しい環境ですが、それでも夏の猛暑には耐 えます。しかし、晩秋から3ケ月以上にわたり降雨ほぼ0の時があり、 それ以後は勢いがなくなりました。
自然発生・侵入・移植の在郷野草
多彩な植生の構成種として、ヒメイワダレソウ植栽内に自然発生・侵入して生かしている在郷野草、および周辺に生育しているものから移植した在郷野草は主に以下のとおりです。
① 自然発生・侵入
オヘビイチゴ
オヘビイチゴは根元から葉柄を叢生し、その先に付ける掌状の小葉が緑鮮やかです。花はヘビイチゴに似た黄花(花期4~6月)ですが、這い上がる茎の先に咲く様はやや粗野な印象で、多少離れて見る方が淡い黄色のベールのようで景色になります。赤い実は付けません。繁殖力旺盛で放っておくとヒメイワダレソウを駆逐してしまうことから、花のピーク過ぎに種子繁殖を抑制するための刈込みや抜き取りなどを行っています。密生状態で雑草抑制効果を発揮します。
カキドオシ
カキドオシの花(花期3~5月)は小さくも目を近づけると実に気品のある紫色で、またツル状の茎に円形の葉がリズミカルに並び付きます。今は侵入過程ですが、繁殖力旺盛なことから今後は管理が必要になると思われます。
イヌタデ
史前帰化植物、別名アカマンマ、穂状の赤花(花や実を包む花被、時期8~10月)はなつかしさを感じる秋の彩りで、遠目では淡い赤色のベールのようです。一年生で種子繁殖し、土手の上部から侵入して広がりつつあります。茎の下部は地を這いつつ節から根を張り、ヒメイワダレソウを駆逐するかの勢いなので、適宜の刈込みや抜き取りを行っています。
② 周辺からの移植
ヘビイチゴ
ヘビイチゴは鮮やかな黄色の花(花期4~5月)と赤い実を付け、ヒメイワダレソウの白花と入り混じって多彩さを演じてくれます。耕作放棄地の周縁部などに生育しており、そこから移植しました。
ヤブラン
ヤブランの柔らかくしな垂れた葉と、穂状に出る紫花(花期8~9月)は夏の暑さをしのいでくれます。樹下などに生育しており、そこから移植しました。
クサボケ
ボケに似た朱色の花(花期4~5月)を付ける小低木で、花が春の暖かさを演じてくれます。土手に生育しており、その枝を採取し、挿木して育てています。3年目の春に数輪の花を付けました。
クサボケのイメージ写真 ⇒
ヒガンバナ
史前帰化植物、秋の彼岸を彩る花(花期9月)です。花茎を伸ばした先に開く鮮やかな赤花はよく目立ちます。周辺に小さな群落があり、そこから移植しました。
③ その他
外来性タンポポ類
近年の調査でセイヨウタンポポの8割以上は在来タンポポとの雑種という報告があります。外来性タンポポ類も自然発生し、早春を彩る華やかな黄花(花期2月~秋)は道行く人たちにも好評であり、生かしています。なお、道路から離れた場所には在来タンポポが生育しており、すみ分けが見られます。
花暦の充実
以上のうちタンポポ類、カキドオシ、ヘビイチゴ、オヘビイチゴ、クサボケはヒメイワダレソウが芽吹く前に開花することから、花暦(はなごよみ)の充実に貢献してくれます。