1)河畔林としての管理
*「4-3.樹木による保全・演出 (2)河畔の樹木の管理 -ウメ」の再掲です。
里地内を蛇行して流れる里川は、里地を掘り込んで流れる掘込河道で、かつては崖状の岸に樹林が茂り、それらの樹影を映し清流が流れていました。
しかし、その後の河川改修により河岸林はほとんど伐採され、コンクリート護岸が施され、合わせて河岸に道路が整備されました。治水と道路事情は改善されましたが、風景並びに自然環境は大きく改変されました。魚類(主にハヤ類)は大きさ・数ともに貧弱となり、かつて瞬いたホタルの光も今はありません。
里川に沿う民有地にウメが連続して植えられている一画があり、大木もあって川面に影を落とし、一部は枝垂れ、その下にある淵には魚たちが多く集まります。魚を狙うサギ類やカワセミも頻繁に飛来し、またカルガモが草を食む姿もよく見かけます。この梅林は希少な河畔林として機能しています。
人は言います “梅切らぬバカ” と、魚たちは訴えます “この梅切るバカ” と。この梅林の管理は、川側は生物生息環境として控え目な剪定を、反対の道路側は道行く人のために花付きを意識した強めの剪定を行っています。
道路と河川にはさまれた民有地の梅林。川側は川面に向かって枝垂れ、 水域と陸域に関わる生物生息環境として機能しており、剪定は控え目 にしています。
道路側は道行く人のために花付きを意識し、通常行われる強めの剪定 を行っています。
今ここで見られるハヤはカワムツと推定されます。淵、草の茂みや 石の下手、植物の垂れ下がったところなどによく見られます。 写真は上段左から順にカワムツ、アオサギ、カワセミ、カルガモの イメージ写真。
2)河畔林としての延伸
希少な存在の河畔林としての延伸をめざし、耕作放棄地の川沿いにネムノキを植樹しました。耕作放棄地の北端で、農地への日射を遮らず、川側に日陰をつくる位置です。ネムノキは里地の処々に自然発生しており、それを移植しました。
なお、河川区域における植樹については国交省「河川区域内における樹木の伐採・植樹基準について」に基づく必要があります。ここは河川区域外ですが、近接していることから同基準の趣旨に則り、樹木の根が河川護岸に及ばないように、同基準に示されているネムノキの根系の水平距離を確保しました。
写真上:河畔林としての延伸をめざして植樹したネムノキ(根締め の草が生えている2カ所)。写真下:ネムノキの事例。
【日陰を必要とする生物】 「森下郁子・森下雅子・森下依理子、川のHの条件 陸水生態学からの提言、山海堂」によると、
“魚は一日中光のあたっている場所が嫌いである。水生昆虫などは生活史のある時期から光のあたっているところでないと生息しなくなるが(光のあたっている場所では石や落葉の陰を好む)、小さい幼生のうちは光のない間隙に潜り込んでいる。”
水生昆虫のカゲロウ、カワゲラ、トビケラなどは魚の主要な餌です。