川の健全性を確認
今回、排水路と化したような里川の内にも健全な川の営みがあり、それを短期間のうちに目の当たりにすることができたのは全くの驚きであり、喜びでした。今、この里川には銀鱗の輝きもあれば、カメやアオダイショウやカワセミもいます。川によって育まれる命の連鎖は消滅していませんでした。
しかし郷土の川は悪循環のなか
現地にいて感じることは、土地離れと同様に、また川離れも進んでいることです。地域の皆さんが岸や橋から川面を眺める姿は日常的に見られますが、興味対象は主にカルガモのようです。川底に下りれば銀鱗の輝きを目の当たりにすることができるのですが・・・しかしコンクリート護岸や水質汚濁からくる抵抗感は、おのずと川を遠退けます。郷土の川は悪循環のなかにあるように見えます。
集落に面する河川においては、できれば自然石積み護岸に、コンクリート護岸にせざるを得ない場合は修景ブロック(割肌ものなど)にして頂きたいものです。
河畔林の復元
環境改善に向けてできることの一つは河畔林の復元です。河畔林は川の生物生息環境の向上、樹陰によるアオコや雑草の抑制、コンクリート護岸の人工的な印象の緩和などに役立ちます。沿川民有地の皆さんにも参加して頂き、日陰等による農業への支障が生じない範囲で、積極的に植樹していきたいものです。
命を守り命を育んでくれる川づくり
かつてこの川で遊んだことのある人たちは、その時の感動的な思い出に心を躍らせます。同様の体験をしてもらいたいがために、都会から訪れる子供たちがいれば川に案内してあげたいところですが、しかし今あの感動に満ちた川はありません。子どもにとって川は最も魅力的な場所の一つであり、定住や移住を呼ぶ大切な資源と言っても過言ではないと思います。洪水から人の命や財産を守る治水機能と、人を含め多様な命を育む環境機能とは、川の整備においては対極の命題とも言えますが、その場の状況に応じた最大限の両立が求められます。
命の連鎖へ帰る
川に下りて、作業で付いた泥を洗い落としていると、そこに小魚たちが近寄ってきます。こちらの心も引き寄せられ、その時、魚たちはもはや他者ではなく、近しささえ感じます。同時に彼らの生存環境としての水質が我が身のことのように感じられてきます。地域の皆さんも川づくりに携わる人たちも先ずは川に下り、水の流れ、銀鱗の輝きに触れてみて下さい。そうすれば、その後は、川が持つ大きな力が改善に向けて誘ってくれることを信じたいと思います。川は人を育て、育てた人を動かし、時に社会までをも変え(1997年 河川法への環境位置づけなど)、川本来の流れを取り戻していく、それが川というものだと思いますから。